タビビトノキ(旅人の木、学名Ravenala madagascariensis)は、マダガスカル原産のバナナに似た植物である。オウギバショウ(扇芭蕉)、あるいは旅人木(りょじんぼく)ともいう。英語名は "Traveller's Palm (旅人のヤシ)"だが、ヤシではなくゴクラクチョウカ科に属する。
名称の由来は、葉柄に雨水を溜めるため、乾燥地帯の旅行者の飲料水供給源として利用されたとも、また高木は葉が東西方向へ扇状に広がることから旅人に対するコンパスの役割を果たすからともいうが、ともに確かな定説ではない[1]。巨大な櫂状の葉が長い茎柄の先に扇状に平面に並ぶ。ストレリチア(ゴクラクチョウカ)の仲間だが、花は小さく目立たない。その特性や扇状の葉を展開する美しい特徴から、世界の熱帯及び亜熱帯地域で広く栽培され街路樹にも利用されている。乾燥地から湿地、水辺まで適応が広い[1]。マダガスカル航空の尾翼に図案化されている。
タビビトノキはタビビトノキ属における唯一の種であり、南部アフリカのゴクラクチョウカ属(Strelitzia)、南米のタビビトノキモドキ属(Phenakospermum)と非常に近しい。以前はこれらがバショウ科に分類されることもあった。
エリマキキツネザルが送粉者として知られており、花序の大きさや構造、及びキツネザルの選択性や摂食方法、鼻口部の長さなどを考え合わせると、彼らの間で共進化が起きたとみられる[2]。
生長にしたがって葉茎が落ち、幼木にはみられない茶色の丈夫な樹幹が現れる。
葉は舟の櫂のような形をしており、左右対称に並んで平面をなすため見た目は扇に似る。葉先は緑色だが、葉茎の付け根は黄色である[3]。
花の色は白。
日当たりのよい場所を好むが、大きくなるまでは日光を当てすぎない方がよい。生育期に窒素肥料を与えるとよく育ち、葉もよく茂る。樹高は平均で7メートルほどに達する。適度な水分の供給が必要である。