アルベオラータ (Alveolata) は原生生物の主要な系統の1つである。大きく分けて3つのグループがあり、それらは形態は非常に多様化しているが、微細構造や遺伝子に様々な類似点があり近縁であることがわかっている。
これに所属するものには以下のようなものがある。
これらはいずれも単細胞生物では有名かつ広範囲に知られる群であるが、それぞれに全く異なったものとして認識されてきた。繊毛虫は活発に動く単細胞動物、アピコンプレクサは病原性寄生性の原虫、渦鞭毛藻はむしろ単細胞藻類と見なされることが多かった。それらの近縁性が主張されたのは、主として分子系統的知識であり、それを追認するように、微細構造における共通点が認められるようになったものである。
これらのほか、これらと特徴を共有するプロトアベオラータがあり、Perkinsus や Chronema などが属する[1]。この分類群は、1991年にアルベオラータと同時に提唱され、2012年には若干修正された[1]が、渦鞭毛藻を内包する側系統である[2]。
最も重要な共有形質は細胞表層のアルベオール(泡室、alveole)の存在である。これは細胞膜を裏打ちするような層を作っている平らな小胞で、普通は柔軟な外被 (pellicle) を作っている。渦鞭毛虫の場合はこの中に鎧板と呼ばれる固い殻状の板が作られる。アルベオラータ類のミトコンドリアには管状のクリステがあり、鞭毛ないし繊毛にも特徴的な構造がある。
おそらく、アピコンプレクサと渦鞭毛虫は、繊毛虫よりも互いに近縁である。つまり、((アピコンプレクサ, 渦鞭毛虫), 繊毛虫) である。
この2つのグループに近縁な属が色々知られており、たいていは類似の頭頂部構造をもつ鞭毛虫である。たとえば自由生活性の Oxyrrhis、Colponema や、寄生性の Perkinsus、Parvilucifera、Rastrimonas、光合成性でサンゴに共生する Chromera、そしてエロビオプシス類 Ellobiopsidae などがある。
上記の主要なグループの間の近縁性については1980年代から提案されていて、キャヴァリエ=スミスが1991年に3つ全てが近縁であるとして正式にAlveolataという名を導入した。これはGajadharらによる分子系統解析でも確認されている。海産無脊椎動物の寄生虫であるアセトスポラ類もここに含まれるという研究もあったが、アルベオールがなく現在はケルコゾアに置かれている。
アルベオラータ類におけるプラスチド(葉緑体など)の獲得についてはよくわかっていない問題である。
この類で葉緑体として機能しているプラスチドを持つのは渦鞭毛藻のうちおよそ半数と、サンゴの共生藻 Chromera のみである。しかし、アピコンプレクサでは、色素を含まず、複数の膜からなる細胞器官を持っており、ここから葉緑体に類似したDNAが発見された。それにより、これが痕跡的なプラスチドだと考えられるようになった。Chromera は系統的にアピコンプレクサに近いことから、アピコンプレクサの祖先は Chromera のような光合成性生物であった可能性も考えられる。[3]
キャヴァリエ=スミスはアルベオラータ類は葉緑体を持った祖先から進化したもので、これはクロミスタの祖先と共通である(クロムアルベオラータ仮説)と提案している。しかしプラスチドは比較的進化したグループにしか見られないため、アルベオラータ類は元々はプラスチドを持たず、渦鞭毛藻とアピコンプレクサは別々にプラスチドを獲得した可能性もあるという意見もある。渦鞭毛藻では約半数が葉緑体を持たない他、珪藻やクリプト藻を起源とする葉緑体を持つものもあり、問題をややこしくしている。
アルベオラータ (Alveolata) は原生生物の主要な系統の1つである。大きく分けて3つのグループがあり、それらは形態は非常に多様化しているが、微細構造や遺伝子に様々な類似点があり近縁であることがわかっている。